理事長あいさつ

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筒井豊春理事長

当財団は2022年12月に創立30周年を迎えました。また、2023年は日越国交樹立50周年という記念すべき節目の年になりました。当財団は1992年にベトナム政府の支援でハノイに設立されて以降、両国間での文化交流を行いながら日越友好親善に尽力して参りました。

ベトナム戦争後、1985年の第一次ドイモイ政策を経て、ベトナムは目覚ましい復興を遂げました。そして今、人口増加に加え、ベトナム経済はアセアン諸国の中でも特に高い成長率を示しています。

ベトナムと日本との歴史は、8世紀の奈良の大仏開眼供養に来日されたフエの僧・仏哲に始まります。遣唐使の阿倍仲麻呂が帰路中に奄美大島辺りで難破し、安南(現ベトナム)に漂着しますが、後に唐の総督として河内(現ハノイ)に駐在しています。

13世紀にはベトナムに蒙古軍が襲来しますが、ベトナムはその都度蒙古軍を撃退しています。蒙古軍はベトナムへの三度目の襲来時に約50万もの兵を投入しましたが、これもベトナムが勝利しました。そのため蒙古軍は日本へ侵攻する軍事力が無くなり、「日本は蒙古襲来を免れることができた」とベトナムの中学の歴史教科書には記されています。もしベトナムが勝利していなかったら、その後の日本の歴史が大きく変わっていたかもしれません。

明治に入り「日露戦争に勝利した日本に学べ」と東遊(ドンズー)運動が起こり、200名以上の若者が日本に来日します。その代表がファン・ボイ・チャウで、静岡の医師である浅羽佐喜太郎の支援でフランスからの独立を目指します。その運動が、後のホー・チ・ミンによるベトナム社会主義共和国の成立につながります。

今世紀末には日本の人口は半減して6,000万人を下回ると国立社会保障・人口問題研究所が発表しています。日本はアジア諸国と連携してこの歴史の大波を乗り切る必要があります。特にベトナムとは単一民族・文化・儒教・仏教など共通している点も多く、日本との親和性の高い国で、日本で働くベトナム人は既に52万人を超え、日本における国別の外国人労働者数で最も多い国になっています。

当財団の現在の中心事業は ①日越文化交流支援事業日本語教育支援事業医療人材育成支援事業人材紹介事業です。

当財団の使命はさまざまな活動を通して日本とベトナムの恒久的な友好親善に貢献することです。今後の50年は日本の人口が急減する時期に重なります。21世紀はその意味で13世紀の蒙古襲来のような国難が襲ってくることは避けられません。当財団の使命を深く肝に銘じ財団活動を続けてまいります。皆様の引き続きのご支援・ご指導を宜しくお願い申し上げます。

2024年4月
一般財団法人 日本・ベトナム文化交流協会
理事長 筒井 豊春